中国・四国労災年金支援センター
逆境のトリセツ
広島県の谷口正典さんは、42歳で障害年金1級に認定されています。谷口さんは、23歳で通勤災害の交通事故により右足を切断され、後には脳の機能障害も明らかになるのですが、令和4年10月、その人生を振り返って本を出版されましたので、紹介したいと思います。
元来スポーツマンであった谷口さんは、障がい者サッカーの仲間と出会い、最強のサポーターである伴侶と出会い、困難を克服して行かれるのですが、この本には身近であって切実な、それこそ厳しい「現実」がつづられています。それでも、興味深く読み進んでいけるのは、ご夫婦の共著ゆえ、お二人別々の視点と感情が編むように描かれていることや「とある嫌われ者」の登場と「トリセツ」といわれる対処法の数々、そして、いずれめぐりあう思いがけない経験への展開に思わず「へぇーっ」と感心させられるからでしょう。
もちろん、身の回りにおきる問題を何回も経験するつらさ、それを受け止める気力、対処法をひとつひとつ工夫する努力がいかに大変か、それから目を背けることはできません。谷口さんがこの本を書かれた理由のひとつは、「トリセツ」にまつわる事柄を記録として残すためだと言われます。確かに、労災ケアサポーターの訪問支援も他人と話す訓練の意味合いがあるようです。すべて、高次脳機能障害のリハビリのための取組みなのです。
谷口さん夫婦のような人生でなくてもそれぞれの「トリセツ」なるものを家族や仲間で共有することができたなら、問題の沼にはまっても、きっと誰かが手をとって次に進んでいけるような気がします。
「逆境のトリセツ」は幻冬舎から発売中です。